『お蕎麦の持ち帰りできる?』
と電話がきました。
「できますよぉ〜」と。袋詰めする時間をいただくだけですから。
僕が小学生のころ、学校から帰って来てお腹がへると、おやつ代わりに蕎麦を食べていました。
茹でる釜はありますし、蕎麦もツユもあります。
一番簡単な食べ物だったんですね。当時ストップウォッチなどなかったので、時計を見ながら茹でました。たいてい、茹でる時間が短くて、もう一度お湯の中に入れて茹でてましたね。これ、失敗例です(笑)
僕の父親は、蕎麦を茹でる時にストップウォッチではなく、感覚でやって、触って確認。
これ、なかなか大変だし、忙しいと難しいです!!
『美味しい蕎麦の幅の中に、毎日の蕎麦を入れていくんだ』
蕎麦の修業先の『そば屋清兵衛』の親父さんから教わったことの1つ。粉物なので、同じ分量、配合て打っても調節が必要です。なので、「美味しい蕎麦という幅をつくって、常にそこに入れておく」ことだと。
僕が蕎麦を打ちはじめて、何よりも一番最初にやりたかったことが・・・
茹で時間を統一する
これだったんです。何よりも…何よりも、これをしたかった。しっかり、目安になる時間を作りたかったんです。
えっ!?と、思われますよね(笑)それは普通のことだろと(笑)先代の父親は、なかなかムラがあったんです(笑)いろいろとやりたかったことがあったようですが・・・(笑)
そして、この茹で時間の目安が作れれば、どなたでも茹でることができるんです!!当時小学生だった僕にも、同じように茹でて、簡単におやつにありつけるわけです。
茹で時間の目安がない麺類を茹でるって、とても難しく、ハードルが上がります。ご家庭で茹でるのであれば、とにかく簡単に、どなたでも、茹でていただきたいと思っています。
滝見屋の蕎麦の茹で時間は、2分30〜40秒。
鍋の大きさにもよるので、少しの調節は必要です。
この、茹で時間の目安ができたので、配送の蕎麦を始めらました。
蕎麦を茹でるって、僕にはとても難しいこと。時間の目安がない、そうすると釜の前から動けない。蕎麦屋に生まれても難しいことでしたから(笑)
清兵衛の親父さんが、僕の蕎麦を食べて確認することの1つ・・・茹で時間。
いつも、聞かれます。茹で時間が大幅に変わると、何かがズレているわけです。そうやって、師である親父さんは、僕の仕事を見てくれているんですね。
ようやく辿り着いた、約2分30秒。
この、150秒までどれだけかかったんだと(笑)
小学生時、失敗してから絶対に決めようと思っていた時間です。
時間を計れば、ご家庭でも茹でることができる。
僕にとっては、当たり前ではなかった…とても難しかった…そして、ようやく作ることができた150秒です。